天皇陛下の譲位御発言につき、国民としていかに考えるか

清原淳平会長

講話日:平成29年1月16日(月)

清原淳平会長

講演要旨

1、平成28年8月8日、「天皇陛下の御譲位のお言葉」について

 この日のお言葉を受け、政府は有識者会議を構成・設置した。委員の意見もいろいろと分かれているが、近く意見集約の会議を開き、結論を出すとのこと。当団体は、その結論に敢えて反対するわけではないが、後世のため、当団体なりの見解を、ここに、明らかにする。

A:まず、天皇陛下のお言葉をよく拝読する必要があり、熟読した結果、陛下のお言葉の要点を以下に、列記させていただいた。((5)(6)は、少し意訳させていただいた)

(1)「日本国憲法下で、象徴と位置づけられた天皇の望ましいあり方を、日々模索しつつ過ごして来ました。」
(2)「二度の外科手術を受け、加えて高齢による体力の低下を覚えるようになった。」
(3)「次第に進む身体の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなる」
(4)「天皇の高齢化に伴う対処の仕方が、国事行為やその象徴としての行為を限りなく縮小してゆくことは無理」
(5)「天皇が未成年であったり、重病などにより、その機能を果たし得なくなった場合には、(中略)摂政を置くことも考えられます。しかし、(このあと、陛下は慎重に言葉をお選びになっているが、)要は「摂政は天皇の名での行為だから、天皇自身は象徴としての重責を果たしていないことになるので、摂政を置くことでは対処できない。いわんや、象徴の地位を“委任”することも許されないと考えている」と仰っていると思う。
(6)「時の天皇の崩御があった場合、その葬祭の儀式が一年間続くし、また、その後任天皇の就任儀式もいろいろと続く。すると、その間、皇室の負担は大きく、また政府の負担も大きいと思うので、この際、この課題をも考えてほしい」との趣旨を仰せられている。

B:上記、天皇のお言葉を熟読し、有識者会議委員の発言について思うこと。

 陛下の8月8日のお言葉は、御真摯・誠実そのもので、「象徴」という地位の重要性を真剣に考えて対処して来た。しかし、80歳を超える高齢に加え、二度の外科手術を経て、象徴としての務めを果たすことが難しくなったと仰せになり、天皇の地位を早く皇太子殿下にお譲りしたい、と切々と訴えておられる、と拝する。私としては、この陛下の願いを、国民は素直に受け止め、極力早く御意向に沿うのが、国民の務めである、と考える。 しかし、残念ながら、有識者会議のメンバーの中には、以上の陛下のお言葉をよく読んでいないか、無視している方がいることは、嘆かわしい。陛下は、象徴という地位は、摂政とか委任に委ねるべきではない、と仰っているのに、有識者の中には、なお「現行憲法第5条にある“摂政”で対処すればよい。」とか、「同第4条にある“委任”で対処すればよい」という人がいることが、嘆かわしい。ぜひ、天皇陛下のお言葉をさらに熟読してほしい。また、陛下の挙げた(6)の問題提起も、永続的制度として考えてほしいとの御趣旨なので、単に今上陛下についての特例法ではなく、国民は、真剣に検討する必要かある。

2、当「自主憲法」の活動経過の概略

 当「自主憲法」は、議員同盟は昭和30年7月の創立から、国民会議は昭和44年の創立から、活動しており、特に昭和54年秋から、毎月開催することになった議員同盟と国民会議の合同による「自主憲法研究会」(=「新しい憲法をつくる研究会」)では、昭和56年ごろから、日本国憲法の中の各章ごとの部分的改正案づくりに入り、毎年のように、5月3日の国民大会でその案文を発表してきた。そして、平成に入ってからは全体に整合性を考えた全面改正案づくりに入り、平成15年には「第一次日本国憲法改正案」を作り、同年の5月3日国民大会にて発表。また、平成18年にはその「第三次日本国憲法改正案」も発表している。
 日本国憲法には、補則を除いて10章に分かれるが、その各章すべてに改正する箇所があるとして、それぞれの箇所につき解説をしてきている。(詳細は、当団体ホームページ参照)

3、「天皇陛下の御譲位のお言葉」について、当「自主憲法」清原淳平会長の考え方

 まず、今回の「陛下の御譲位のお言葉」を拝聴し、憲法の規定をそのままにして、特例法や皇室典範の改正で済ますことが、果して正しいだろうか、という率直な疑問がある。
(1)現行日本国憲法において、天皇の地位は第一章のトップ、第1条に明記されているように、対外的に日本国を代表する極めて重要な地位である。天皇が生前譲位されることは、今の憲法が想定していないところであり、譲位ということになれば、譲位された天皇の向後の敬称をどうするか、例えば、「太上天皇」「上皇」「先帝」か、あるいは、新しい御住居の地名を採り「○○院」とするか等々があり、譲位の条件についても、その重要性から、皇室典範という法ではなく、憲法に明記するのが、本筋であると考える。
(2)また日本国憲法第2条に「皇位は世襲のものであって、」とあるが、「世襲とは、代々受け継ぐこと」ではあるが、これまで、皇位継承は崩御が前提との認識があっただけに、御譲位についても、単に皇室典範によるだけではなく、やはり、憲法改正が本筋である、と考える。
(3)なお、憲法改正には、第96条により、衆参各議院の総議員の3分の2の多数の同意が必要だが、現在、まさにその条件を満たしており、このたびの陛下のテレビ発表放映に国民も尤もという認識が多数なので、(陛下御自身には、政治的な御意図ではないことが明らかだが)、これこそ、憲法改正を世に問うべきではないか、と考える。もし、これに反対する政党が出れば、その政党こそ、国民の支持を失うことになる、ものと思う。

◎「現行憲法」と「皇室典範」の下での、天皇・皇室の権限・権能は、極度に制約され過ぎている

〇当団体は、平成15年発表の全面改正案で、日本国憲法の全章、各条文について、改正すべき箇所を明記している(その具体的内容は、平成15年発表案文を見ていただきたい)。その中で、「第一章 天皇」の章の第1条~第7条の各条文についてもそれぞれ改正すべき箇所を挙げ、また、それに伴い「皇室典範」の条文についても、改正すべきだ、としてきた。それは、なぜか? 明治憲法下の[皇室典範]は、国会の制定する法律とは別の「皇室自律の原則」に基づく「皇室法」という別体系の法の下にあった。しかし、敗戦後にマッカーサー連合軍総司令官の指示でつくられた現行憲法と、それに伴い国会が制定する法律の下に置かれた新「皇室典範」は、天皇制は許されたものの、天皇・皇室に対して懲罰的に過酷な制約を課したものだ。
 すなわち、現行憲法の天皇・皇室は、英国王室などと異なって、また、一般の日本国民が有する諸権利、例えば、個人的資産を所有することも、許されない。現憲法第8条〔皇室財産の授受〕と第29条〔財産権〕を見ていただきたい。また天皇・皇族が地方巡幸され、地域住民が産物を献上したいとしても、財産と見なされることを恐れ、せいぜい小さな花束程度をお受け取りになるだけである。また、皇族は、第22条〔居住・移転・職業選択の自由〕も制限され、女性皇族が御結婚された場合に臣籍降下されるのは第14条〔法の下の平等〕に反するのではないか等々、〔基本的人権尊重〕の制約がある。今回の高齢による譲位も、許されないとするならば、過酷な制約である。国民は、そうした天皇・皇族の置かれた実態を考え、占領下に決められた天皇・皇室への懲罰的制約を取り除くべく、立ち上がっていただきたい。

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